今、教室ではJ. S. バッハ《平均律》を勉強している方が多いです。
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今、教室ではJ. S. バッハ《平均律》を勉強している方が多いです。
ピアノを勉強する人たちにとって
『ヨハン・セバスチャン・バッハの曲を弾く』ということは
大きな意味があります。
「バッハ」と聞くだけで、敬遠する人も多いですし、
ピアニストにとっても、
バッハをリサイタルのプログラムに入れることは、大きな挑戦です。
それだけバッハの曲は
他の作曲家の作品に比べて「難解」なのです。
しかしその難しさは
リストやラフマニノフのそれとは全く異なります。
ー 彼らの活躍したロマン派から近現代のピアノ曲は
バッハの作品よりも音符の数が驚くほど多いにもかかわらず。
そうした曲と比べても
バッハを「難解」たらしめている原因の一つは
その音楽話法、作曲技法にあります。
バッハは1685年に生まれ、1750年に65歳でその生を閉じました。
(今年はバッハ生誕333年、ゾロ目の年ですね)
音楽史ではバッハが没した年を区切りとして
1750年までを「バロック時代」としています。
バロック時代の音楽の特徴は、
複数の独立した声部によって構成されている音楽(ポリフォニー)でした。
しかしバッハの晩年には、
ドイツでは、偉大な啓蒙主義者フリードリヒ二世が王につき、
学問においては理性が、
芸術においては感性が中心に捉えられるようになります。
音楽は独創性と主観を謳い、
個性を主張する「新しい音楽」を求める動きが起こり、
バッハのポリフォニックな音楽は、「古いもの」として評価されなくなってきます。
それにもかかわらずバッハは、
昔ながらのポリフォニー中心の
対位法を駆使した音楽を作り続けていました。
バッハは生前、
オルガンのヴィルトゥオーゾとしては名を馳せていましたが、
ドイツの代表的な作曲家として認められていたわけではありませんでした。
(有名だったのはヘルマン・ハッセや、ヘンデル、テレマンらでした)
バッハの死後、その名は急速に忘れられていきます。
が、19世紀になってフォルケルを筆頭に、
メンデルスゾーンやシューマンらによって
バッハの真価は再評価されていきます。
ベートーヴェンはバッハを「不滅なる和声の父」と呼び、
ベートーヴェンはもちろんの事、
ショパン、シューマンなどの多くの作曲家が
《平均律》を毎日弾き、
そこから作曲の極意を学んでいました。
私たちが生きている現代は、
テレビをつければ、
簡単なメロディに和声がついた
耳に優しい曲が流れて
こちらにその気がなくとも、こうした音楽を聴いて日々過ごしています。
幼児が親や幼稚園・保育園で触れる童謡も、
テレビから流れるものと同じ作曲法で作られています。
こうした音楽が常に溢れている世界に身を置く私たちが
バッハの音楽を聴くと、
新鮮に感じ、
またその高貴な旋律に「ハッ」とし
バッハの魅力に惹きつけられ
ピアノを勉強するものならバッハを弾きたい、
と思うことは自然なことだと思います。
しかし、それを演奏するとなると、一筋縄ではいかない。
なぜならバッハの作品を演奏するには、
楽譜を読み解く力が必要となるのです。
(次回に続きます)
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