バロック音楽を読むために知っておきたいこと
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前回の記事の続きです。
バッハの作品(=バロック音楽)を演奏するには、
楽譜を読み解く力が必要だ、ということを書きました。
バロック時代の楽譜には、
テンポ、強弱、指使い、フレーズなどの細かいことが書かれていません。
それを自分の感性で弾いていてはいませんか?
それにもし
何も指示がなければ、
禁欲的に、余計なことは何一つしてはいけない、
あるいは、
何をしても良い、と考えていたら、
そのどちらも間違っています。
楽譜を読むということは、
楽譜に書かれた音を、
4分音符なら4分音符、
8分音符なら8分音符、というように
音価の通りに弾いても、「正しく弾いた」とは言えません。
バロックからウィーン古典派までの楽譜には、
記されていない大切な情報が多くあり、
それを知っていなければ、正しい演奏とは言えないのです。
ほんの触りですが、
ここで例をあげましょう。
【テンポ・拍子】
例えば、拍子の取り方ですが
現代の私たちは、4/4拍子といえば
1小節に4分音符が4つあると考えます。
ですがバロック期からモーツァルト、ベートーヴェンあたりの考え方は違います。
当時は、
現在でいう全音符を基準として(Tempo ordinario:基本拍)
全音符を二つ(2拍子)、
あるいは三つ(3拍子)に分ける、という考えでした。
全音符(つまり1小節)は楽曲を通じて
その長さは変わることはなく、
テンポは常に一定を保っていました。
そして1楽章が変わっても、
この基本拍を感じるように演奏する、
ということも
念頭に置いておかなければなりません。
時々バッハの平均律を弾いた際、
プレリュードの後のフーガを
全く別の曲のように新しいテンポを取る演奏に出くわしますが
これはバッハの時代にはありえないことです。
こうした習慣はモーツァルト、ベートーヴェンの時代も踏襲しています。
【アーティキュレーション】
バロック音楽を弾く際、
ピアノの先生からの質問で
一番多いのがアーティキュレーションです。
「切って弾くのか?」「レガートをつけるのか?」
なるほど、
例えばインヴェンションを見てみると、
スラーが付いている楽曲はニ長調のみです。
わざわざ書いている、ということは
スラーなしで弾く傾向もあった、と捉えることができます。
メルマガ登録の方には、
すでにステップメールで7回にわたって説明していますが、
アーティキュレーションは古典の指使いを知ることによって
ある程度解決されます。
この時期のアーティキュレーションは
2つの音を基本単位として考えましょう。
そして和声をしっかりと捉えながら
分節することが大事です。
その際に注意したいことの一つに
同じ大きさで書かれている音が
実は、旋律ではなく前打音だったりすることもあるということです。
前打音には必ず主音へスラーをかけると同時に、
前打音にアクセントをつけることも忘れないようにしたいです。
(もう一つ、大事な弾き方がありますがここでは省きます)
前打音は和声を感じると、見分けやすくなります。
また3度以上跳躍する音間も要注意。
分節します。
案外と知られていませんが
インヴェンションの第1番の右手、
2拍目最後のドと3拍目のソの間は必ず切音する場所です。
ウィーン音楽大学ではすでに、
ピアノ専攻者にもこの指導法が行われているそうです。
私もこのことを何度も言ってきましたが
「チェンバロ奏者だから」ということで信じてもらませんでした。
でも、今は「ほら〜!!!」という思いと同時に
私ってそんなに信用ないのか・・・とシュンとしてます・・・
【舞曲】
バロック時代には舞曲がたくさん出てきます。
最近は「舞曲を知るためには舞曲を実際に踊ってみよう」
と関東でも様々なセミナーがありますし、
バレエ教室にも、バロック舞曲の1日体験ワークがあるようです。
私もイタリアにいた頃は
舞曲のレッスンに参加していました。
でも舞曲が踊れるようになったら
舞曲が弾けるようになるのか、といえば
それはそう簡単な話ではないようです。
【テンポ・拍子】の取り方・感じ方を知った上で
各舞曲の音楽的な特徴を出していくことが大切かな、と思います。
舞曲の伴奏だったものを
「芸術」の域まで引き上げるのは、
なかなかに大変なことです。
まだお伝えしたいことはありますが
長くなりますので
今日のブログではごくごくさわりの部分を
ご紹介するにとどめておきます。
ご存知のようにバロック時代は
現代のように、
情報がどこでも簡単に手に入る時代ではありませんでした。
音楽は徒弟制度で、ごく限られた範囲でしか行われていませんでした。
ということは、逆に、上記のことは
わざわざ書き記さずとも
周りは当然知っていたのです。
しかし現代の私たちの音楽は
不特定未知数の人のために発信されているので、
楽譜に特別な配慮が必要となりました。
その配慮に慣れた私たちにとって、
音符しか記載のないバロック作品を前にすれば、
戸惑うのは当然のことといえるでしょう。
今、私たちが親しんでいるバッハのほとんどの作品は
バッハの周りにいた子どもたちや
弟子たちのために書かれたもので、
個々の技量によって、
装飾音符が変化されたり、省略されていました。
(写真は息子のために書かれたバッハの装飾音表)
バッハの作品のなかに、
同じフレーズを見つけるも
一方には装飾があるが片方には装飾がない、
という場面に出くわすことがありますが、
この意図は、
学習者が「指示のない装飾が見つけられるか」
試されてる、
あるいは、
繰り返し書く手間を省いた、といった理由がありますし、
学習者にとって技術的に難しい場合は
「装飾を控えても良い」
などといった教育的な目的があります。
バロックを弾くとき、
有名な人の録音を聴いたり、
先生がそう言ったから、
と、人の責任にして真似事で弾いていませんか。
コンクールでいくつもの賞を取った人たちの演奏を聴いても、
同じ曲でもまったく違う演奏で
戸惑う・・ということはありませんか。
その理由はどこにあるのでしょう。
もう少し、
違う分野の
絵画に置き換えて考えてみましょう。
ただ美しいとキリスト教絵画を見ること
(もちろん、それだけでも十分楽しいことです)
から一歩掘り下げて
なぜマリアは百合を持つのか、
なぜマリアは赤や青のマントを羽織るのか、
どうしてユダの衣装は黄色なのか、
などの理由を知ることで、
私たちはより一層その絵画の本質と触れ合うことができることと思います。
音楽も同じことではないでしょうか。
教室のレッスンでは
こうした楽譜に書かれていないことを
ゆっくりとお伝えしています。
音楽の勉強に終わりはありませんが、
門下生の方が
何が正しいのかをご自身で考えながら
バロック音楽と向き合えるように
お手伝いしたいと思っています。
当教室は、幼児からピアノ指導者までの指導をしています。
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