教師が質問すると、隣のお母さんの顔をついつい見ちゃう行動の裏には

チェンバロ・ピアノ奏者 水野直子です
練馬区桜台・氷川台・平和台 
水野直子ピアノ・チェンバロ教室のブログへようこそ

ただいま、新型コロナウィルス拡大防止のため、
教室でのレッスンを休止しております。

レッスン再開は、今後の政府の発表に準じます。
ご迷惑をおかけいたしますが、
ご理解のほど どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

長年講師をしていると、
いろいろなお子さんに出会います。
いろいろなお子さんに出会う、ということは、
いろいろなご家庭に出会う、ということです。

 

今日はその中でも、親が同席している際に、
生徒(子供)が、講師のお話よりも
親の顔や反応を見てから行動をする
生徒の心についてお話ししたいと思います。

 

 

一般に、親や教師が子供に行う教育や、
多くの上司が部下に行う指導は、
賞罰教育が多いです。

賞罰と聞くと、ちょっとドキッとしませんか?
私は、エントリーシートに書く
「賞罰」という欄を初めて書いた際に、
悪いことはしていないのに
ドキッとした覚えがあります。

でも、大抵は、音楽の場合、
「〇〇コンクールで優勝」とか
「▲▲奨学生」など、
ポジティブな内容が多いと思いますが。

 

賞罰教育とは、良いことをすれば褒め、
悪いことをすれば罰を与える、というもので、
一般的な指導法として
現代社会の中に受け入れられています。

ほとんどの人は、
この賞罰教育を受けて育っているので
そのせいで「褒められよう」「認められよう」
という気持ちとともに育ちます。

 

 

この認められようとする願望を、
承認欲求と呼びます。

 

 

でもね、これって本当に正しいのかな?
本人の意思で言いたいことややりたいことが
できているのかな?

 

 

ここで一つ、私の経験談をしようと思います。
もう、とっても昔のお話だから・・・
時効かなと思います。

 

 

実はむか〜し、
まだまだ私が若かった頃の話なのですが
その時、小学校へ上がる前の
ある男の子のレッスンをしていました。

彼は、他の教室から移ってこられた方で、
元気で、性格もとっても活発だったんですね。

いつも「なんで丸じゃないの〜!」
「合格しないのは嫌だ〜!」
「ぼくがんばってるのに、なんで〜」が口癖で
まだまだ若かった私は、
彼のレッスンが近づくにつれ、
気持ちが落ち込み・・・
ハゲるほど悩みました。
(実際、ハゲたの・・
あの頃は、私もウブで、ガラスの心臓だったもので・・)


 

彼の「なんで、なんで」という部分は、
今回のこととは違う心の問題もあるから、
今日は触れないでおきますが・・・・
実は、このお子さんのレッスンでは
レッスン中、
ずっとお母さんがついていたんですね。

彼はレッスン中に、私から、
間違った音や、リズムを注意されたら、
その都度、まずお母さんを見ます。
そして、私に向き直って
「お母さんがこう言ったから弾いただけで、僕は悪くない」
というんですね。

 


ここには、2重にも3重にも絡まった、
様々な問題があります。

 

私はまずその中で、一番目立っている
「レッスン中に親の顔をうかがう」ことを
やめてもらうために
お母さんにも子供さんにも
「レッスンは一人で受けてもいい」
ということを話し、
彼には、「レッスンでは間違えてもいい」、
と伝えることから始めました。

レッスンを一人で受けるようになってから
彼は、心が安定して、レッスン中に
「だって」「でも」「なんで」という発言が
ほとんどなくなりました。

 

彼は、母親と離れることで、
やっと自分に集中できるようになったんですね。

 

この事例はごく一部ですが、こうした
他人の顔色をうかがう生き方は良くないし
して欲しいと願う親は一人もいないと思います。


人によって、言うことは違います。
それは価値観によって言うことが違う、
とも言えますが、
その価値観とは、経験によって作られている、
ということを忘れてはいけません。

 

今回のように、
この先、親と先生の意見が食い違ったら、
どうしましょうか。
ピアノ教室ならば、先生を変えてしまう?


それも一つの案かもしれませんが、
学校や仕事で同じことが起こったらどうしましょう。

 

 

実はこの事例のお母さんは、ピアノ未経験者でした。
未経験でも、大人の脳で理解できることを
頑張って教えていたんですね。
子供さん思いの頑張り屋さんです。
でも、間違って教えていたんです。
そしてその間違いが、子供には正しく全てだったんですね。

もし彼のように「専門知識を勉強した人」よりも
「専門的な知識はゼロでも肉親の意見に従う」
ようになったら、
ピアノ教室へ通う必要はないばかりか、
彼は、親の承認欲求のために生きることになります。

そして、
承認されることを何よりも大切に思っているのに、
社会に出た時に、
全員に承認されることはなく
誰かには受け入れられないこともある、
ということを
年齢が上がるごとに感じるようになり、
その結果、いつも人生に不満を持って
生きる人間になってしまいます。

 

賞罰教育は、飴と鞭の教育です。
飴と鞭は、
人を動かすのに手っ取り早い方法ですが
これは、本人のためにならない教育なんです。

 

ピアノを通じて子供達の生きる力を育てたい私は、
まず、ピアノを弾くことを自分の頭で考えて、
どんな演奏を目指すか、を
判断できる思考を育てたい、と思っています。

 

そのためにの引き出しを、
これからもどんどん増やし続けていきたいです。

 

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