演奏動画:バッハ《イギリス組曲第3番》から 〈ガヴォットI & II〉

バッハの《イギリス組曲》は、《フランス組曲》《パルティータ》の
一連の組曲作品の中の最初期のもので、
個人的な印象としては、
3つの組曲のなかでは、ダントツの弾きづらさを感じます。

逆に組曲の中で、最も弾きやすいと感じるのは
《フランス組曲》かな。
が、そうはいっても《フランス組曲》が難しいことに変わりはありませんが。

イギリス組曲について

《イギリス組曲》の作曲背景に関する大部分のことは不明です。


バッハの伝記を書いたヨハン・ニコラウス・フォルケルが
「この組曲はあるイギリス紳士の為に作曲した」と
書き残していること(1802)や

またバッハの息子の一人である
三男のクリスチャン・バッハは、
この組曲の写譜を持っていたのですが
そのタイトル部分に
pour les Anglois イギリス人のため」という言葉を
書き添えていることから
この組曲は《イギリス組曲》と呼ばれるようになった、
という話が今のところ最も有力です。

またこの組曲は、名前の由来が不確かなだけでなく、
作曲年月日についても不明です。
第一組曲は、ケーテン時代(1717-1723)の後半には
作曲されていて
それ以降の組曲は1725年までには完成していた
ということだけがわかっています。

こうした不明な点が多いことの理由は、
この組曲のオリジナルが残っていない、ということが原因の一つです。
現代の私たちが聞き、弾いている《イギリス組曲》は
同時代の複写譜を元に形にしたものです。
現存している完全版と部分的なもの、
30以上もの複写譜を参考にして、
現在の私たちの手元に、現代譜となって出版されています。


《イギリス組曲第3番》の構成

イギリス組曲の特徴は、
一般的な組曲として始まるアルマンドの前に
ドラマチックな前奏曲が挿入されていることです。

ト短調で壮大なスケールを持つ第3番は
この組曲集のなかでも特に人気ですね。

曲の構成は以下の通り。

Prélude 前奏曲
Allemande アルマンド
Courante クーラント
Sarabande サラバンド
Les agéments de la même Sarabande 装飾音付きサラバンド
Gavotte alternativement ガヴォット 交互に
Gavotte II ou la Musette ガヴォットII またはミュゼット風に
Gigue ジーグ


今回はこのうちの
Gvotte alternativement ガヴォット 交互に
Gavotte II ou la Musette ガヴォットII またはミュゼット風に
を演奏しています

舞曲 ガヴォットについて

ガヴォットはフランス語ではgavotte
古英語ではgavot古英語
イタリア語ではgavotteと書かれます。

よく聞かれるので、最初に答えておきますが、
イタリアとフランスのガヴォットのテンポは違います。
イタリアはテンポが速く、フランスは遅いです。
なので、作曲家がどちらのつづりを使っているか、要チェックです。

さて、このガヴォットダンスは、⺠族舞踊として
現在もフランスのブルターニュ地方で踊られています。

しかし芸術作品としての舞踏音楽は、
宮廷舞踏が基礎となっています。

宮廷のガヴォットは 16 世紀のブランル1に由来するテンポの速い2拍子の舞曲です。

宮廷のガヴォットは、 1720 年代、30年代にその流行のピークを迎えます。
これは貴族たちの間に流行したパストラル趣向に関連しているようです。
というのも、この傾向は、
宮廷やパリの街の華やかな生活に飽きてきた貴族が
のどかな田園生活や牧歌的雰囲気に憧れを持ち、
それらを理想化 して出来上がったからです。
18 世紀には、羊飼いが
バグパイプの音に合わせて野外で踊るような、
まさし く牧歌的な曲風となります。

ガヴォットIIの「ミュゼット風」の
ミュゼットはバグパイプの小型版。


チェンバロの上尾先生がミュゼットを演奏されている動画を発見!
↓これは必見!↓
https://fb.watch/bZuZ45oKsK/

舞曲としてのガヴォットは、
2拍子で、中庸のテンポを持ちます。
時々すごく遅いガヴォットに出くわしますが、
それでは本来のスタイルとは離れてしまうので、
気をつけたいところです。

この曲をチェンバロでミュゼット部分を弾くときは、
2段鍵盤の上部分を弾いて、音を弱めて
かつスーパーレガートに弾くので
ピアノでもその雰囲気を壊さないように
ソフトべダルとダンパーペダルを使ってみました。

ほんと、この曲、好きだわ〜!!

今年はたくさん演奏動画を残したいと思っているので
また録画してご紹介しますね。

ではまた。

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