ピアノの指番号は守るべきか?

ピアノは指を動かしながらも
目は指を動かす数秒前を見ています。

目から脳に入ってくる情報量は、これくらい。

音の高低差どの高さのドレミファソラシなのか
音符と休符全音符/全休符、付点2分音符/付点2分休符、2分音符/2分休符、4分音符/4分休符、8分音符/8分休符、16分音符/16分休符 etc.
強弱記号fffmfmpppp etc.
臨時記号シャープ、ダブルシャープ、フラット、ダブルフラット、ナチュラル etc.
アーティキュレーション記号スラー、スタッカート、アクセント、タイ、テヌート ect.
ペダルどこで踏んでどこで外すか

このほかにも、弾く前に速度や拍、調性なども頭に入れておく必要がありますね。

ピアノは、これらを組み合わせながら
いくつもの動作を同時に行っているので
ピアノを弾いているときの脳には
相当な負荷がかかっているのではないかと思われます。

脳も筋肉なので、
鍛えるとどんどん活性化するそうですから
脳に負荷をかけるピアノを弾いている人はボケない、なんて言われますよね。

それはさておきまして、
上記は気をつけられても
指番号は抜け落ちる、という生徒さんが結構います。

これだけのタスク処理をしているので
それは仕方ない・・のでは
残念ながらないのです。

指番号は作曲者がつけたものと校訂者がつけたものがある

指の大きさは人それぞれです。
小さい手の人には、場合によっては届かない音形もあれば
指の形や筋肉のつき方によって
番号以外の違う指を使う方がいい場合があります。

でも、これを初心者が自己流で判断するのは危険です。
なぜなら、ピアノの指番号は
そもそも「自然な流れ」を作るためのものであり、
その自然な流れを判断できるのは
ある程度の「耳」を持っていなければいけないからです。

初心者の方は、その「耳」を育てている段階です。
そういう時はまだ「耳」が育っていないので
自分の「弾きやすさ」の方を優先してしまいがち・・・
そして「ちょっと不自然に聞こえるけど、弾きにくいところだから仕方ない」
という誤った判断をして
曲の本来の美しさを損なってしまうことも
往々にして起こってしまう・・なんてこともあります。

ではどんなところを特に守るべきなのでしょうか。


楽譜には、作曲家がつけた指使いと、
楽譜の校訂者や出版社が付け加えた指使いがあります。

バッハやモーツァルトの時代には
指番号をつける習慣はなかったのですが
ベートーヴェンあたりからは
出版を前提として書かれるようになったために、
また、曲の作曲法が変わって
これまでにはない指使いを必要とするようになったために
作曲家自らが「大切」だと思う指使いを書き記すところが出てきます。
それは、現代譜では
校訂者によるものと区別するために
イタリック文字で印されているので
そこは必ず守りましょう。
(ベートーヴェンにはかなりあります)
その指番号を使うことで、
独特なアーティキュレーションが生まれる場合もあるので
イタリック文字が出てきたら、要注意です。

例として、ピアノソナタop.110 の初版を挙げます。
下のEsに「4 3」の指使いがありますが
これがベートーヴェンのものです。
現代譜では、校訂者によって
他の指使いが書き込まれているので
この部分はイタリック文字が使用されているはずです。
興味ある方は確かめてみてください。

水野のレッスンでの見解

私自身、指番号の歴史を1600年から研究してきました。
研究当初は、この指番号が
バロック時代のアーティキュレーションに
密接に関わってきたことに大きなショックを感じました。

ショックを感じた、というのは、
現代の私たちが使っている指使いとは
全く違う指使いをしていたからです。

ですが、この指使いを
チェンバロという強弱の起伏が薄い楽器に使うと
驚くほど大きな感情変化をもたらすことに気づきます。

これがピアノを勉強しているだけでは
得られない知識なのです。

ピアノの演奏がロマンティックになる悩みを持つ人は多いはずですが、
その悩みを解決するためにも、
指使いを学ぶことは必須だと考えています。

しかし残念ながら、チェンバロの時代には
その運指の記載が全くありません。
これにはさまざまな理由があります。

その理由を挙げると一つの論文ができるほどなので
ここでは詳しくは書きませんが

しいて挙げるならば

  • 作曲家自らが演奏者であった
  • 音楽は、師から弟子へ直接口頭で譲られてきたものであったために、わざわざ書く必要がなかった

ことが大きな理由として挙げられるでしょう。

また音楽自体が今のように複雑ではなかったために
ある程度の規則が頭に入っていれば
指使いに悩む必要が、それほどなかったのかもしれません。
(これは水野の私論です)


現在の指番号は、
バッハの息子、 C. Ph. E. バッハの著
『正しいクラヴィーア奏法』(1753)にその萌芽を目にすることができます。
私たちにとって、この指使いこそが、
「常識」となっているのですが
この「常識」だけでは、
父バッハの音楽を弾ける、
とは言い切れないと思います。
現代譜に添えられている指使いは、
ピアノを歌わせるものであって、バロックスタイル基づいていない、
時には全く理にかなっていないものもある、と
チェンバロとピアノ両方を弾く水野にとっては感じる箇所がかなりあります。

こうした理由から、私のレッスンでは
その間違った指使いを、
当時のもの=古典運指に戻す作業をするのですが
古典運指を試した方、
特にバロック音楽に悩んで私の元に来られる方は
「なんて弾きやすい」と感動して帰られます。


では古典以降のレッスンではどうしているのかというと
まずは楽譜に書かれている指番号を一度やってみてもらいます。
そして筋肉や骨格が育っていない子どもや
手の小さい大人の方には演奏を見て、
楽譜に書かれている指番号とは違う指番号を指導することがあります。


これがピアノ講師の腕の見せどころで、
独学の人とピアノレッスンへ通っている人の演奏の違いとなると思います。

ピアノ講師でいるためには、勉強に終わりはありません。
皆さんの「ピアノが弾きたい」という願いを叶えるために、
私ももっともっと精進したいと思います。
だって私自身が「ピアノが弾きたい」のだもの。



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